聖路加国際病院と国立精神・神経医療研究センターなどによる研究グループ14日までに、発達初期の幼児における昼寝の長さや時間帯が、夜間の睡眠時間や就寝時刻に影響を及ぼすことを明らかにしました。この研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

 聖路加国際病院によると、これまでも幼児は“昼寝をしすぎると夜寝なくなる”、“遅い時間に昼寝すると夜寝なくなる”と言われてきました。また、子どもの昼寝が夜の睡眠にどのような影響を及ぼすのか、これまでも各国で研究が行われてきましたが、ほとんどの研究がアンケート調査によるもので、睡眠パターンの基礎が形成される1歳半を対象に計測機器を用いて評価した研究はなかったといいます。今回の研究ではこれを科学的に証明できるようになりました。
 この研究では、健康な幼児50名を対象に、アクチグラフという体動計を1週間継続して装着するとともに養育者に活動記録を記載してもらい解析を行いました。その結果、昼寝時間が長いほど、また昼寝の終了時刻が遅いほど、幼児の夜間睡眠時間の短縮と就寝時刻の遅れを認めたと聖路加国際病院は発表しています。
 この発表に先立ち、平成21年に行われた厚生労働省の保育所保育指針改定で保育園の昼寝が見直されたことに関連して乳幼児の昼寝について、睡眠の専門医である坪田聡氏がAll Aboutで以下のように解説しています。

保育園で「昼寝の時間」がなくなっている

 保育園でよくある光景と思われてきた昼寝が、最近は見られなくなりつつあるといいます。これは、平成21年に厚生労働省の保育所保育指針が改定されて、保育園で日課とされてきた昼寝が見直されたからだと坪田氏は指摘しています。
 坪田氏によると、赤ちゃんは、眠ったり目覚めたりを短い時間で繰り返して成長するもので、こうした眠り方を「多相睡眠」というと解説します。1歳ぐらいになると、夜にまとめて長い時間眠るようになるが、昼寝もある程度の時間を必要とします。
 坪田氏は、睡眠には個性があるので人それぞれだとしながら、3歳ぐらいになると昼寝をしなくなる子どももいると指摘。小学校に入ると、昼寝をする子どもはほとんどいなくなるが、これは昼に眠くならないのではなく、友達で昼寝している子がいないとか、学校には昼寝をする場所がないことが原因だといいます。

 1日の眠気の変化から見ると、午後2~4時には眠気のピークが来ます。坪田氏は「できればこのときに昼寝をすると良いが、社会的な制約から昼寝をしなくなっている」としています。
 昼寝をすることは、多くの子どもにとって自然で健康的なことだが、悪い面もあると坪田氏は説明します。 保育園1時間半ほど昼寝をした日と昼寝をしなかった日の、夜に寝つく時刻をくらべると、昼寝をした日が30分遅くなります。また、昼寝をしない幼稚園児に比べて、昼寝をする保育園児は、朝の寝不足感が強く、朝の機嫌も悪く、園への行きしぶりもよく見られるそうです。こうしたことから、昼寝をする保育園児の夜更かしの原因は、昼寝にあるとされ、保育指針から日課としての昼寝がなくなったのだといいます。

子どもに昼寝は必要ないのか

 それでは、小さな子どもは昼寝させないほうが良いのでしょうか。坪田氏はそれを否定し、「昼寝が必要な子どもを無理に起こしておくと、夕方以降フラフラになって事故を起こしたり、夕食をとらずに朝まで眠ってしまったりする」と話します。そして、大事なのは、睡眠はとても個性的だということを理解する必要があると指摘します。3才の子どもにも昼寝を必要とする子どももいれば必要としない子どももいるそうです。
 つまり、保育指針を変えた意味は、「子どもたち全員に、同じ時間だけ昼寝をさせることは良くないので、それぞれの子どもにあった昼寝のとり方に変えましょう」という意図だそうです。昼食後に眠気を訴える子どもには、昼寝をさせてあげるべきであり、子どもが眠くないと言っても、ボーっとしていたり活動性が落ちていたり、ふらついたり機嫌が悪かったり、集中力や意欲が落ちたりしていたら、昼寝が必要というサインだと坪田氏は解説します。
 5歳ぐらいまでなら、1時間~1時間半の昼寝をとらせたいが、遅い時刻まで眠っていると夜の睡眠に悪影響が出るため、午後3~4時までには起こすのが良いといいます。また、就学前になったら入学後の準備として、昼寝の時間を短くしていってあげてほしいと話します。もちろん1日トータルの睡眠時間が短くならないように、夜に寝つく時刻を早くしなければなりません。
 一方、「昼寝しなくても大丈夫」と言っている子どもは、本当に昼寝しなくてもよいのかという問いについては、夜の睡眠だけで睡眠が足りていないということにならないよう、小さな子どもたちには、平均1時間の昼寝が必要だとしています。

 

 これらのことから、小学校へ入学するまでの子どもたちには、毎日午後に1時間~1時間半の昼寝タイムを設けて、眠れる環境を提供することが大切だといいます。一方しばらくしても眠れない子どもや、途中で目覚めた子どもは、静かに別の部屋へ行って遊ばせればよいと坪田氏は指摘します。
 また、よく眠っている子どもでも、午後3~4時には起こすことが重要で、寝起きが悪ければ、寒冷刺激を与えたり、明るい場所でおやつを食べたり、軽い運動をしたりするとだんだん目が覚めてくると説明しています。